化学流産を経験して

化学流産。

 

 

それは妊娠の可能性がある性交を行った
女性自身も気付かずに起きてしまうものです。

 

 

受精はしたものの、着床せずにそのまま流れてしまうというもので、
それは生理と同時期または少し遅れて出血が始まるため、
「生理が来た」と思ってしまう女性は多いと聞きます。

 

 

 

そしてまた、これは流産数にカウントされないものでもあります。
婦人科の処置も必要ないもので、
「受精卵側の異常」「自然淘汰」とあっさり片づけられてしまうのです。

 

 

しかし、妊娠を望む女性ほど、この化学流産に気付いてしまうという
悲しい現実があるということを皆さんは知っていましたか?

 

 

妊娠を望み、妊活に励まれておられる女性は、
基礎体温を測ったり、生理予定日前後には
そわそわしてしまったりしますよね。

 

 

私はその化学流産経験者です。

 

 

生理予定日前にはいつも月経前症候群に襲われる私ですが、
その時は何故か乳首の痛みといつも以上に体が火照っているのを感じました。

 

 

「あ、妊娠しているかも」と思ったのですが、
その時はちょうど主人と旅行中。

 

 

基礎体温計も忘れて出掛けてしまったために体温も分からず、
生理予定日前ということもあり、
「早く予定日になれ」と旅行中はずっと願っていました。

 

 

 

妊娠検査薬

旅行を終え、帰宅したあたりがちょうど生理予定日でした。

 

 

予定日当日は仕事もあり、
その月は基礎体温も測ったり測らなかったりと少し適当になっていたために、
いてもたってもいられず、仕事帰りに薬局で早期妊娠検査薬を購入しました。

 

 

何度も買っては、何も浮かんでこない判定窓にがっかりさせられていたので
「今日は検査をせず、もう少し待とう」とその日はトイレにこっそり隠しました。

 

 

翌日は休日、そして奇しくもオリンピック開催国が決定される日で
TVはそのことばかり報道していました。

 

 

ふと思い立ち、検査をしてみようとトイレへ向かい、いつもと同じように採尿。
1分間、トイレの中でじーっと検査薬をにらみ続けていました。

 

 

1分が経過しても、判定窓は真っ白。

 

 

「また、思い過ごしだったのかな」と落ち込みながらも、
トイレを出て、洗い物をしていると
「子どもの名前は双方の父から一文字ずつ貰おう」
と考えている自分がいました。

 

 

今まではそんなことは考えもせず、好きな芸能人の名前がいいなとか
そんな単純な命名を妄想するだけだったのに、不思議だと思いました。

 

 

そしてネットで姓名鑑定を試してみると私の脳裏によぎった名前は、
どの姓名鑑定でも良い名前でした。

 

 

 

陽性反応

先に妊娠出産していた友人から

「妊娠検査薬は最低でも1日は保存しておくこと。
1分以内に判定が出なくても後に出てくる可能性もある。」

と散々聞かされていたので、
トイレに置きっぱなしにしていた妊娠検査薬を
ひとまず夫の目のつかない所に保管しようとトイレに再び戻り、目を疑いました。

 

 

先ほどは真っ白だった判定窓にうっすら陽性反応が出ていたのです!

 

 

慌てて子持ちの友人に電話をして現状を報告すると、
その友人も同じキットで検査を行った際、
すぐに判定は出なかったけれど2時間後に見たら出ていたというのです。

 

 

「やっぱりな」と思う自分と、喜びと不安が入り混じる自分と、
沢山の気持ちが浮かび上がり冷静ではいられなくなり、
仕事中の夫に電話をかけました。

 

 

夫は弾んだ声で
「本当に!?今日は急いで仕事終わらせて帰るから安静にしていて!!」
と何故か安静命令を出してきて「舞い上がってる」と思いました(笑)

 

 

いつもより相当早く帰宅した夫は着替える間もなく、
検査薬を見せるようにせがむので夫に渡し、
2人で検査薬を見つめました。

 

 

「出てる…」
「だから言ったじゃない」
と会話を一言二言かわすと、愛しげに私の腹部を撫でる夫。

 

 

優しい表情の夫を見て幸せでした。

 

 

 

待望の妊娠

夕食後も

「どこで産むか」
「まだ時期が早いから、受診は来週の夫の休みに合わせて行こう」

などと話し合い、夕方浮かんだ名前を夫に話すと大賛成してくれ、
まだ性別も分からないお腹の中の子に向かってその名を呼びかけていました。

 

 

何故か男の子だという気持ちしかお互いにありませんでした。

 

 

翌日、出勤時に信頼していて公私共にお世話になっている上司にのみ、
「妊娠している可能性がある」ことを告げました。

 

 

まだ報告は早いと思いましたが、嬉しい気持ちと
職場でも知ってる方がいてくれると心強いという気持ちで先走ってしまいました。

 

 

上司も勿論喜んでくれ、色々とアドバイスまでくださいました。
妊娠判明前は同僚の手抜きに苛々したりしていましたが、
穏やかな気持ちで仕事のカバーをしたり出来る自分に驚きました。

 

 

妊娠したというだけで女はここまで幸せな気持ちになれるのか。
と、信じられませんでした。

 

 

以前は気にも留めなかった、車の「赤ちゃんが乗っています」ステッカーを見ると、
「おー先輩だ」と勝手に顔も知らない人まで先輩だと認識してしまうほどに、
常にお腹の子のことを思い過ごしていました。

 

 

しかし、それはほんの束の間のことで終息へ向かっていたのです。

 

 

 

不安

数日おいて再検査をしてもうっすらとしか出ない陽性反応に、少し不安を感じつつ

「まだ生理予定日1週間経過してないから、薄いんだ」と、お腹を撫で
「来週の火曜日には君の姿をエコーで見ることが出来る?ママ楽しみだよ」

と自分に言い聞かせるかのように話しかけていました。

 

 

夫も妊娠が判明してからは、
寝る時に必ず私の腹部に手を当てて眠るようになっていました。

 

 

夫の手の温もりとお腹の中にいる私たちの子ども。

 

 

夫の幼少期のやんちゃぶりを義母から聞いていたのと、
私も大層なわんぱく少女だったからどちらに似ても、
相当な元気っ子だなぁと思いながら眠りにつきました。

 

 

翌朝、トイレに向かうと茶色いオリモノが付着していました。

 

 

暇さえあれば、妊娠のサイトを読み漁っていたので
「茶色いおりものは初期にあるというけど…これのこと?」と思いつつ、不安に襲われました。

 

 

気持ちよさそうに寝ている夫を揺さぶり起こし、
「茶色のオリモノが出てる!」と涙声で訴えました。

 

 

夫の休みの日だったので、
当初考えていた受診日より数日早く産科へ駆け込みました。

 

 

待合室には臨月間近であろう妊婦さんや、
母子手帳の交付方法を指示されている女性で溢れかえっていました。

 

 

 

出血

待合室は幸せに満ち溢れていました。
不安なんて誰ひとり抱えていないようにさえ感じました。

 

 

待合室の本棚には妊婦さん向けの雑誌やカタログなどがたくさん置かれており、
ファッション雑誌のようなものまでも妊婦さんや産後のママ向けのものが多く、
どれを手に取ったらいいのか分からず、
一番手前にあった雑誌を手に取り夫と眺めていました。

 

 

奇しくも、「妊娠判明から出産まで」というような特集をしている雑誌だったので、
不安を抱えながらも
「この月くらいには産休申請するか、ギリギリまで働くか」
と考えていました。

 

 

看護師さんに名前を呼ばれ、問診票を元に細かく内容を聞かれ、
採尿をするように言われたので採尿コップを持ってトイレに入ると…

 

 

尿と一緒に真っ赤な血が大量に出てしまいました。

 

 

尿は血で汚れてしまっているし、生理と同じような出血でした。
看護師さんにその旨を申告すると「一応これで検査をしてみます」と言われ、
順番まで相当時間がかかるとのことでしたので、
夫と一旦帰宅して再度出直すことにしました。

 

 

おりものシートは持参していましたが、
生理用ナプキンは必要ではないと思っていたので帰宅し、
慌ててナプキンを装着して、リビングで夫と無言で座りました。

 

 

 

内診検査

「もうこれは駄目だろう」と素人の私でも分かりました。

 

 

まだ胎胞確認できるかできないかの段階なのに、
この出血量は妊娠継続できずに流産してしまうと嫌でも脳裏によぎり、
涙が溢れて止まりませんでした。

 

 

夫はそんな私をなだめるように抱きしめて落ち着かせようとしてくれていましたが、
夫も同じように泣いているのが分かりました。

 

 

「でもまだ分からない。駄目だと決まった訳じゃない。なんせ俺らの子どもだからね!」
と励ます夫と共に受診の順番になる時間帯に再度、産婦人科に行きました。

 

 

ちょうどタイミングが良かったのか、10分程度で診察室に呼ばれました。
医師は初老の優しげな眼差しを持つ方で、こんな状況にも関わらず
「芸能人のあの人に似てるな」と思いました。

 

 

先に看護師さんとやり取りした問診票を眺め、「尿検は?」と看護師さんに聞き、
私に見えないように看護師さんは医師にだけ検査結果を見せました。

 

 

その後、簡単な口頭問診をし、いざ内診台です。
検診等で何度も上がったことはありますが、
出血している最中の内診は初めてだったのでとても緊張していました。

 

 

医師が優しく声をかけてくださいながらの内診検査でしたが、
どうしても不安が襲ってしまいました。

 

 

 

化学流産

エコー検査まで行い、また診察室の方へ向かうとエコー写真を眺めている医師の姿に
「もしかして!」と期待をしながら、椅子に腰かけると、
医師はゆっくりとこちらを向き「尿検査では確かに妊娠反応が出ています。」と一言。

 

 

すがる思いで次の言葉を待つと、それは私が最も聞きたくない言葉でした。

 

 

「ただエコーでは袋も見えません。
出血量から考えても妊娠継続は難しいと思います。
子宮外妊娠の可能性もあります。
現段階では化学流産の可能性が一番大きいと考えます。」

 

 

そう告げる医師の顔は辛そうな、申し訳なさそうな表情でした。
後ろで見守る看護師さんも同じような表情でした。

 

 

絶対に病院では泣かないと決めてきたのに、涙が出てきました。
その後、血液中の妊娠ホルモンを調べたいとのことで採血をすることと、
一週間後に再受診をしてほしいことを告げられました。

 

 

子宮外妊娠の場合は激しい腹痛が襲うので、
出血量が異常に増えたとか腹痛が出て来たら真っ先に病院へ来るようにも指示され、
診察室を後にしました。

 

 

お腹の大きい妊婦さんと談笑しながら採血をしていた看護師さんが、
無言で私の採血をしました。

 

 

それだけで十分すぎるほど、現実を感じなければなりませんでした。

 

 

 

再受診

それから一週間は仕事を休みました。

 

 

眠っていても夢に出てきてしまうほどの精神状態で泣いてばかりでしたので、
とても仕事が出来る状況にないと判断し、
申し訳ないと思いつつ「胃腸風邪で…」と職場には嘘をつきました。

 

 

家事も出来ず、一週間何をしていたか今となっては思い出せません。
ただただ泣いていました。

 

 

1つだけ覚えていると言えば、
家に閉じこもって過ごしていると、生理用品がなくなってしまい、
流石に夫にも頼めない物だと思い、
ボロボロの姿で近くの薬局へ買い物に行きました。

 

 

そこは、2週間前にドキドキしながら検査薬を買った場所です。
生理用品だけ持ってレジへ向かう途中、
幼稚園児を連れた妊婦さんとすれ違いました。

 

 

見たくもないのに、赤ちゃんのオムツやミルク売り場を目にしました。
車の中でまた1人、号泣。

 

 

何故、私なのだろう。何故、生理用品を買いに来ているのだろう。
と自分を呪ったことだけは、今でも明確に覚えています。

 

 

一週間後、夫と共に再受診をしました。
夫は仕事をわざわざ休んで付き添ってくれました。

 

 

その頃には出血も止まり、普段の生理後のような状態でした。
一番行きたくない場所なのに行かなければならないことがとても苦痛でした。

 

 

 

我が子

診察室に入り、一週間の様子を受け答えし、
内診台へまた上がることとなりました。

 

 

前回よりも長くエコーを診てくださっているように感じました。
それは医師も一抹の期待をかけてくれているのだという、
何よりの証拠だと思うとまた泣けてきそうになったのを覚えています。

 

 

その後、病院側の配慮なのか、別室に通され医師と対面しました。
医師は前回のエコー写真と今回のエコー写真を持ち、
私にゆっくり説明してくださいました。

 

 

「今回もエコーには何も映っていない。
血液検査の値もごく僅かの妊娠ホルモンで、継続妊娠しているとは思えない。
今回は受精卵側の都合で流れてしまった。」

 

 

想像していた答えでした。

 

 

分かっていたとは言え、立ち直るまでにはかなりの時間を要しました。
正直に言うと、今でも辛く涙が出ることがあります。
これはきっと夫と私は一生忘れられないものになるであろうと覚悟しています。

 

 

「胎児」とも呼べない段階での流産ですが、
私たち夫婦にとってはかけがえのない「我が子」でした。

 

 

そして、生まれてくることは出来なかったし、
気付かずに生理として片づけてしまったかもしれない命に気付かせてくれたこと、
結果として悲しい結果にはなりましたが、親孝行の子だと思っています。

 

 

 

 

母となるための試練

今回、妊娠を望み、
妊活をしている方々にこのような聞きたくもない内容を執筆したかというと、
妊娠を望んでいる方ほど化学流産に気付き、落ち込んでしまうからです。

 

 

流産のサイトに行っても、化学流産を嘆く人は少ないです。
けれど個人のブログを見ると、やはり悲しんでいる方がとても多いことに気付きました。

 

 

化学流産は母体側ではなく、卵の異常とされています。
これから妊活をされていく上で、私のような思いをされる方もいらっしゃるかもしれません。
毎月、基礎体温の上昇下降に一喜一憂される方も多いかもしれません。

 

 

今回、自分の経験を元に化学流産を題材にさせていただきましたが、
私の経験から1つ皆さんにお伝え出来ることは、
妊娠しても100%出産できるわけでないということです。

 

 

それほど、妊娠出産というのは奇跡の連続です。
妊活をされ、すぐに授かる方もいるでしょうし、その反対もいらっしゃるでしょう。

 

 

妊娠反応が出ても、私のように化学流産をしてしまう人もいれば、
初期流産をしてしまう可能性もあるのです。

 

 

それは全ての女性に強いられた「母となるための試練」なのかもしれません。
現在の私は軽度のうつがあるので妊活は一時ストップしています。

 

 

 

 

妊活とは

私は、妊活というのは「赤ちゃんが過ごしやすいお腹にしておく準備期間」と考えます。

 

 

例えば葉酸摂取、適度な運動、ストレスをため込まないこと、
風疹などの抗体チェック…

 

 

挙げればキリがないと思いますが、
万全の体にすることが妊活において一番最初にすべきことであり、
また、私のような経験をしてしまっても、
いつか愛する相手の子どもを宿すことが出来た時、
きっと何事もなく出産された方より感じるものがあるかもしれません。

 

 

もし、妊活の間に周囲で先に妊娠された方がいたら、
恨めしい思いになってしまうかもしれません。
でもそれでもいいと思います。

 

 

「子どもを望んでいるのにこんなどす黒い感情を抱くなんて…」
と自己嫌悪に陥る必要もありません。

 

 

私も半年は妊婦さんや赤ちゃんを見るのがとても苦痛でした。
お腹の大きい奥さんを気遣いながら買い物に付き合う夫婦の姿を見ると

「ちくしょう!母体の体力を全く奪わないくらい安産で元気に生まれてきやがれ!」
「パパママ、じぃじばぁばに囲まれてアイドル気分を味わえ!」
「20数年後、孫抱かせて親泣かせてやれ」
と自称「呪い」をかけることにしています。(笑)

 

 

10組夫婦がいれば、10パターンの妊娠出産があります。
焦らずゆっくり、空の上で遊ぶ子どもたちが
「あのおうちの子になりたい」と思ってくれるその日を穏やかに待てるといいですよね。
なかなか切り替えは難しいものですが。